有給を取る「後ろめたさ」を払拭したい
概要
日本は有給の取得率は世界最低レベルであり、その理由の1つには「有給を取ると会社に迷惑がかかる」という後ろめたさがあります。このレポートではその問題を解決すべく「有給取得成績表」を導入して得られた効果についてまとめています。
背景
働き方において「休むことの重要性」が近年注目されています。
2019年4月からは労働基準法が改正されて有給を年5日取得することが企業の義務となり、2021年4月には自民党が「選択的週休3日制」を提言したことでも話題になりました。
しかし、未だに日本は有給取得率が低く、義務化された翌年の2020年には5年ぶりに低下してしまいました。
日本の話をしてきましたが、そもそも弊社の有給取得率が低過ぎるのです。
2019年に「有給浄化」というイベントをやっておきながら、私はこれまで一度も有給を使ったことがなく、周りの先輩方が使っているところも殆ど見ません。
仕事が忙しすぎるわけでもなく、有給を取りづらい雰囲気もありません。
おそらく「有給」の存在を忘れてしまっているのです。
そこで有給の存在を社内で可視化する実験を試みました。
実験「有給の成績表を掲示する」
有給で重要な要素が2つあります。
1つは「2年間使わないと失効してしまう」という期限で、もう1つは「勤続年数」によって変わる取得数です。
それぞれの社員に取得しなければならない期限と数があることから、有給はある種の「ノルマ」として捉えることができます。
そこで、いっそのこと成績表にしてみました。
まず、全社員に最低限のノルマとして「年5日分の取得」という、労働基準法で定められた目標が定められています。
そして、各々がもつ最大目標を有給取得数とし、失効する期限が迫っているものについてはノルマの達成期限を記入しました。
また、このノルマを達成しなければならない使命感を演出するため、必要な心構えを「有給十訓」としてまとめて、成績表の横に張り出しました。
掲載後、各社員に説明をしました。
現在取得している有給が何日あるのか、いつまでに何日分失効してしまうのか、それらを細かく説明すると皆一様に有給の尊さを感じていたようです。
さて、効果は出るのでしょうか。
驚くほど如実に現れた実験の「効果」
成績表を掲示した翌日、早速効果が現れました。
なんと3名の社員が合計11日分の有給取得を宣言したのです。
そして、実験開始から1ヶ月後、エンジニアの木戸さんがノルマを達成したため、大袈裟に称えてみました。
こうすることで有給の取得が過剰に肯定され、「迷惑がかかる」などという後ろめたさも生まれません。
その後も従業員が主体的に有給を取得していきました。
中でも、同じ案件を担当する社員同士が調整し合って有給が取れるようにスケジュールを進めるという、有給を取るための自発的な行動も見られ、明らかに有給への意識が高まったことが見て取れます。
従業員の感想
有給成績表を導入後、すぐに最低ノルマを達成した木戸氏、武藤氏に話をうかがってみました。
成績表が出来てから一番変わったのは有給取得に関する後ろめたさがなくなったことですね。大々的に成績表にしてくれたおかげで、会社が有給取得を肯定してくれていることが目に見えて実感できたんです。
木戸啓太氏のコメント
特に、サイズが無駄にでかくていいなと。表のサイズに会社の「有給とってね!」というスタンスが出ている気がします。
この表を見たときに一番驚いたのは、あまりに自分が休んでいなかったという事実です。失効する有給も可視化してくれているので、賞味期限ギリギリのお菓子を見つけた気分で「はやく有給とらなきゃ!」となります。
武藤崇史氏のコメント
これの表がオフィスでいつも目につくところに貼ってあるのも大事ですね。毎月1回ぐらいは有給について考えるようになりました。
まとめ
日本人にはやりすぎぐらいがちょうどいいかも
思いのほか効果があった「有給成績表」ですが、今回の成功要因はやりすぎたことにあるのではないでしょうか。
日本人は言葉の裏にある心情を推量することに長けています。そのため、会社がいくら本心で「有給とっていいよ」と言っても、社員は「今とったら怒られるかな?」「でも全部使っちゃダメだよね…」と、自分に制限をかけてしまう。
そこで「有給をとれ!これはノルマだ!」ぐらいの強い意思表示をすることで、従業員たちは安心して有給を取得することができたのではないでしょうか。
ぜひ他社でも導入することをオススメします。