学生参加型の交流イベントを通して、うつぼエリアを「デザインのまち」として発信できるか。

概要

就職活動中の大学生や専門学生とうつぼエリアのクリエイティブ企業をつなぐことで、企業・学生間の交流創出やうつぼエリアの活性化をめざしてきた「UTSUBO DESIGN TOURS」。2024年4月2日に5回目となるイベントを開催し、初参加の1社を含むクリエイティブ企業14社に参加いただきました。今年は5校の芸術・美術学校に加え、大学に縛られることのない「フリー枠」でも学生を募集。結果として計129名の学生たちが、うつぼの街を訪れてくれました。

[開催日時] 2023年4月2日(火)13時~21時
[会場]うつぼエリアのクリエイティブ企業各オフィス
     うつぼエリアの飲食店
[内容] ① うつぼエリアのクリエイティブ企業のオフィス見学
     ② うつぼエリアの飲食店とのコラボレーション
     ③ 代表企業によるパネルディスカッション
     ⑤ 企業と学生の交流会
[参加者] 大学生3,4年生、専門学校生2年生、129名
[参加企業] うつぼエリアのクリエイティブ企業14社
[主催] 株式会社人間、うつぼ町内会
[協力] 大阪芸術大学、大阪デザイナー専門学校、京都芸術大学、京都精華大学、神戸芸術工科大学、靱公園近隣の飲食店

背景

イベントに参加する企業や飲食店を徐々に変化させながら、うつぼ界隈のつながりを広げつつ深めることに取り組んできた「UTSUBO DESIGN TOURS」。企業や飲食店とのコラボ企画は引き継ぎつつ、今回はイベント並びにうつぼ界隈の情報発信を行うプラットフォームとして、Instagramアカウントの設置にも挑戦。うつぼで活躍する若手クリエイターチームが中心となって運用を行い、うつぼで働く人々とイベントに参加した学生たちが継続的に接点を持ち続けられる、新しいつながりのあり方を提示しました。

実験「クリエイターと学生の交流を通じ、うつぼエリアが持つ魅力を再発見できるか。」

イベントには昨年もご参加いただいている京都芸術大学、大阪芸術大学、大阪デザイナー専門学校、神戸芸術工科大学に加え、京都精華大学の学生が初参加。また、今回も昨年と同様、大学の枠に捉われない「フリー枠」での募集を行いました。

参加企業は、前年も参加した「株式会社アクアスター」、「株式会社アストラカン」、「株式会社アートアンドクラフト」、「株式会社common graphic」、「有限会社JIKAN Design」、「株式会社ダブリューアール」、「有限会社デコラティブモードナンバースリー」、「株式会社人間」、「株式会社NONVERBAL」、「株式会社parks」「NPO法人HELLOlife」、「株式会社ミーティング」、「リノべる株式会社」の計13社に加え、「株式会社HARBOR」が新しく加わりました。

学生たちはガイドの引率で各企業を訪問。現場の雰囲気や、企業ごとにカラーが異なるクリエイティブ事例、うつぼで働くクリエイターたちの人柄にふれていただきました。また同時刻に「Tour for Buisiness」として、うつぼ界隈のクリエイティブ企業に興味を持つ社会人の方々に向けたツアーも実施。大阪・関西万博に関わる企業など多様な企業の方々に参加いただくことができ、イベント終了後に実案件に向けた打ち合わせが行われるなど、実際の仕事につながる動きも生まれました。

昨年に引き続き、うつぼ公園周辺の協力飲食店8店舗で使えるイベント独自のクーポン「UTSUBO FOOD TICKET」も配布。クリエイティブ企業訪問の合間にカフェ利用をしていただくことで、うつぼエリアの飲食店の魅力に触れていただくと同時に、お店の方々と学生との間に対話を生みだすことをめざしました。

協力飲食店は、「coffee ali MASSE」、「 SIK eatery」、「チュロカアーラ」、「コトモノミチ at パークサイドストア」、「neji」、「PEWS gallery&cafe」、「FLOR GELATO ITALIANO OSAKA」「CHASHITSU time」の8店舗です。

うつぼエリアの飲食店と学生とをつなぐ「UTSUBO FOOD TICKET」

加えて今回は、就職活動に奮闘する学生たちをサポートすることを目的に「うつぼ相談デスク」を初めて設置。デザイナー向けキャリア支援サービス「ReDesigner」を運営する株式会社GoodPatchにご協力いただき、就活に関する悩みから身の上話まで、どんな話も気軽に相談できる環境を整えることで、就活イベントとしてのコンテンツの充実にも取り組みました。

また、例年同様「パネルディスカッション」を今回も実施。うつぼ界隈のクリエイティブ企業が、実際に案件でコラボした事例についてのトークと、入社2〜3年目の若手社員座談会を行いました。

また、昨年大盛況だった「うつぼ公園の見える交流会」を今年も開催。うつぼ公園に面したカフェ・SIK eateryを会場として、学生とクリエイターが食事を楽しみながら会話できる時間を設けました。交流会には、約90人の学生が参加。クリエイティブ企業の代表と学生との交流が生まれていたことはもちろん、学生同士がひとつのテーブルを囲んで活発に議論を交わす姿も見られました。

結果と考察

継続的にイベントを成長させ、うつぼエリアの活性化と街・学生とのつながりを着実に深めてきた「UTSUBO DESIGN TOURS」。5回目の開催となった今回は、イベントを通じて得られたつながりを生かし、うつぼエリアを「デザインの街」として発信していくための土台を構築することを目標に掲げて活動を展開しました。ここからは今回の目標を主体に、イベントの開催意義とその成果についてご説明いたします。

目的:イベントを通じて得られたつながりを生かし、うつぼエリアを「デザインの街」として発信していくための土台を構築する

第5回となる今回は「いいひと、いいとこ、いいしごと。デザインのまち・うつぼ。」というコンセプトを設定。うつぼの人・街・仕事の魅力をイベントを通じて学生に伝えつつ、「デザインのまち・うつぼ」という、今後広く伝えていきたい街のアイデンティティを示すことをめざしました。

コンセプトの実現に向けて、今年から情報発信の起点となるInstagramアカウントを作成。当アカウントでは、イベントに参加・協力してくださっている飲食店やクリエイティブ企業の情報などを継続的に投稿。学生はもちろんうつぼで働くクリエイターもこの街の魅力を再発見できるメディアとして、イベント終了後もうつぼと学生が継続的につながり続けられるプラットフォームとして、機能させていく予定です。イベント開催時にアカウントのフォローをお願いしたことで、数十名の学生とつながりをもつことができました。

アンケート結果[参加学生 / 参加企業]

イベントに対する評価は、下記アンケートにまとめています。

参加した学生のアンケート結果

まず、学生向けに行ったアンケートの「就職活動で目安にしている基準」という設問では、「一緒に働く人」「働く場所や地域」を重視しているという、アンケート結果が集まりました。

「うつぼエリアで働くことに興味がありますか?」という設問では、95.7%の学生が「とても興味がある」「興味がある」と回答しました。

・地区が一体となってクリエイティブ企業を応援している、仕事をしているというのはとても珍しくて、そのようなことができているというのを知れただけでとても大きな収穫だったと感じました。また、どの企業もわかりやすく、丁寧に教えてくださって、とてもいい経験ができたなと思います。

・実際に企業内を拝見させていただくことで、働いた時の想像をしやすくなった。

・他の学校の生徒と関われる機会は滅多にないので、とても刺激的で楽しい時間でした。

・会社員になっても「作品作りがしたい。」という気持ちをもって自己表現に取り組んでもいいんだ、と勇気をいただけました。

参加した企業のアンケート結果

また、企業向けに実施したアンケートでも、100%がイベントに対し「とても満足した」「満足した」と回答してくれたうえで、「うつぼ町内会の活動に参加したいですか?」という「うつぼエリア」に対する関心度を示すアンケートでは「はい」と、肯定的な意見が81%を占めました。

・同じように、クリエイターとして働いている人たちと話したり、交流できたところです。また、意識の高い学生さんに刺激をもらえます。

・代表者同士の交流があること、若手同士の交流があること。

・デザイン会社の横のつながりを得られた。

・交流会を一か所にしたことで、学生同士の会話が去年よりも活発になっていた。学生と喋っていない間も代表同士で会話を楽しむなど、企業参加者側も楽しそうだった

まとめ

イベントそのものの成功だけでなく、SNSなどを活用した今後に生きる新たなつながりづくりに取り組めたことが、「UTSUBO DESIGN TOURS 2024」の主な成果となりました。また若手メンバーが加わったことで、運営体制も変化。昨年度までの課題であった運営メンバーの固定化や、人員不足によるオペレーションの混乱などを解決し、より良いかたちでのイベント開催を実現することができました。

次回の「UTSUBO DESIGN TOURS」は、2025年春に開催予定。次回は、Instagramなどを通じて生まれた学生とのつながりを生かし、学生たちを運営に巻き込むなど、新たなイベントづくりのかたちを模索していきたいと考えています。


この研究に参加したメンバー

花岡
久岡 崇裕
松原愛美
小園智香
武内音
米山菜乃花
村川晃一郎
須鎗裕次郎
山本夢乃

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