屋外映画上映で創り出す、公園への関心と地域の繋がり

概要

「公共性の確保」のための規制強化により、敷地内で行える行為が限定的になりつつある地域の公共空間「公園」。安全性の確保はもちろん重要ですが、利用者が減り、大規模な都市型公園が衰退すると、周辺エリアの活気も衰えます。そこで今回は、公園のさらなる存在意義を探るために靱公園で映画を上映し、「公園」という特別なスポットがもつ地域振興の有効性を証明しました。

[開催日時] 2022年10月8日(土)19時~21時
[会場] 靱公園 東園(噴水周辺の芝生エリア)
[内容] 靱公園での屋外映画上映
[上映作品] イエスタデイ(2019年)
[参加者] 50名
[主催] うつぼ町内会 ※
[協力] えほんpicnic、CAFE SIK、スタンドyaë

※ うつぼ町内会 … 株式会社人間、株式会社parksやうつぼ周辺企業が主となり、靱公園やその周辺をより活性化させる活動を行うチーム

背景

昨年にも開催した屋外上映会。開催に至った背景は前回のレポートのとおりです。
前回の開催を踏まえ、今回は新たにいくつかのことに挑戦しました。

靱公園の並木

公園映画祭「3つの課題と解決方法」と、前例の重要さ

前回の開催で大きなハードルとなったのが「会場」「電力」「作品」の3点でした。
今回の開催では、前回の事例を踏まえいかに開催に至ったかについて説明します。

1
会場
会場は前回と同様大阪市西区にある靱公園。公園のイベント利用については大阪市西区内の公園を管轄している「大阪城公園事務所」からの利用許可が必要です。前回の開催では問い合わせた際に「前例がない」「近隣住民にとって不快な騒音にならないか」「他の公園利用者が目撃し、不快な思いをしないか」などの懸念を示されることもありましたが、今回は「前例があるなら」と簡単に許可をいただくことができ、地道に前例を作っていくことの重要さを再確認しました。また、前回の会場がグラウンドエリアだったのに対し、今回は前回叶わなかった噴水周辺の芝生エリアを利用する許可も快くいただきました。
靱公園東園の芝生広場
2
電力
前回は靱連合町会の会長さま、ITC靱テニスセンターの支配人さまのはからいにより、ITC靱テニスセンターが管理している自動販売機の電力を無料で使わせていただきました。しかし今回の会場である芝生エリアには周辺に自動販売機などの電力がありません。そこで今回はキャンプや災害時にも使える大容量のポータブル電源を使用しました。購入となると安いものではありませんが、レンタルすることで費用を抑え、安定した電力を確保することができました。
ポータブル電源 Jackery2000 Pro
3
作品
上映作品については前回と同様、個人上映用に映画データを貸し出している企業に問い合わせ、上映可能な映画リストを入手。リストの中から上映会の条件に沿った作品を選定しました。この問い合わせにも「前例」が役立ちました。

公園映画祭における新たな挑戦

今回は靱公園で毎年開催されている「えほんpicnic」の後夜祭として開催しました。えほんpicnicは「絵本や公園での顔見知りづくり、つながりのきっかけづくり」を目的として開催されている、ファミリー層をターゲットとしたイベントです。そこで、えほんpicnic終了後におとなも楽しめるイベントとして、公園映画祭を開催しました。結果としてえほんpicnic終了後に家族連れで参加してくださる方々も見られました。

えほんpicnicの後夜祭ということでテーマを「夜のピクニック」として、雰囲気作りにもこだわりました。スクリーンや芝生にライトで飾り付けをしたり、賑やかなシートを敷いたりクッションを並べたり、楽しげな雰囲気を演出しました。

そして今回課題となったのが、会場での飲食の提供です。近隣飲食店とも連携すべく会場で飲食の販売を考えましたが、今回の公園利用許可は「大規模イベント」とは捉えられず、あくまで「集会」規模での利用許可。そのため、公園内での飲食物の販売はできません。そこで、靱公園に隣接するCAFE SIKさんのテラスにてCAFE SIKさん、近隣店舗のスタンドyaëさんのフードを販売しました。

結果と考察

『公園映画祭「3つの課題と解決方法」と、前例の重要さ』で述べた通り、前例のなかった前回と違い、今回は比較的スムーズに事前準備が整い、開催へのハードルはさほど高くありませんでした。雰囲気づくりにもこだわったことで会場が賑やかになり、より多くの偶然通りかかった通行人に興味を持ってもらうことにも成功しました。

また、上映会場付近のベンチに座り映画を楽しむ方々や、周辺で個人的にピクニックをしている方々も映画を楽しんでくれたりなど、自然に会場が、賑わいの場が広がる理想的な公園のあり方のような風景もみられました。

このようなイベントの継続的な開催によって、地域住民や公園に関わる人が関心を持ち、活用方法を見い出し、愛着が持てる公園になるきっかけづくりができたのではないかと思います。

まとめ

「前例がない」というひとことだけではねのけられるものが、たった一度でも「前例がある」という事実だけで物事がスムーズに進む。今回は「前例」に助けられ、会場づくりや飲食提供方法の模索など新たな挑戦にも繋がりました。このようにひとつひとつ小さな「前例」を積み重ね、より良い公園のあり方、地域との繋がりを作っていければと思います。

うつぼ研究室では今後も、地域住民の皆さま・周辺企業のクリエイターとともに靱公園、うつぼエリアをさらに賑やかにするために活動していきます。

写真:木村華子


この研究に参加したメンバー

花岡
松原愛美
小園智香
武内音

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