クリエイターと学生の交流を通じ、うつぼエリアが持つ魅力を再発見できるか。

概要

就職活動中の大学生とうつぼエリアのクリエイティブ企業をつなぐことで、企業・学生間の交流創出やうつぼエリアの活性化をめざしてきた「UTSUBO DESIGN TOURS」。2023年4月4日に4回目となるイベントを開催し、初参加の1社を含むクリエイティブ企業15社に参加いただきました。今年は4校の芸術・美術学校に加え、大学に縛られることのない「フリー枠」でも学生を募集。結果として、昨年を超える192名の学生たちが、うつぼの街を訪れてくれました。

[開催日時] 2023年4月4日(木)13時~21時
[会場]うつぼエリアのクリエイティブ企業各オフィス
     うつぼエリアの飲食店
[内容] ① うつぼエリアのクリエイティブ企業のオフィス見学
     ② うつぼエリアの飲食店とのコラボレーション
     ③ 代表企業によるパネルディスカッション
     ⑤ 企業と学生の交流会
[参加者] 大学生3,4年生、専門学校生2年生、192名
[参加企業] うつぼエリアのクリエイティブ企業15社
[主催] 株式会社人間、うつぼ町内会
[協力] 大阪芸術大学、大阪デザイナー専門学校、京都芸術大学、神戸芸術工科大学、靱公園近隣の飲食店

背景

「UTSUBO DESIGN TOURS」では第1回・2回・3回と、回を追うごとに、イベントに参加する企業・飲食店を増やし、街とのつながりを深めてきました。多くの学生との出会い、関係性づくりにも成功し、イベントをきっかけとしてうつぼエリアの企業でインターンを行ったり、実際に就職したり、といった事例も引き続き生まれています。
4回目の開催となる今回は、対象大学・参加学生の数を増枠し、昨年から引き続き、飲食店とのコラボレーションも実施。訪れた学生にうつぼエリアの魅力を感じていただくことはもちろん、イベントに参加するクリエイターたちも「この街で働く意味」「この街の魅力」を再発見できるような仕掛けづくりにも挑みました。

実験「クリエイターと学生の交流を通じ、うつぼエリアが持つ魅力を再発見できるか。」

イベントには昨年もご参加いただいている京都芸術大学、大阪芸術大学、大阪デザイナー専門学校に加え、神戸芸術工科大学の学生も参加。また、今回は大学の枠に捉われない「フリー枠」での募集も行いました。

参加企業は、前年も参加した「株式会社アクアスター」、「株式会社アストラカン」、「株式会社アートアンドクラフト」「株式会社京阪神エルマガジン社」、「株式会社common graphic」、「有限会社JIKAN Design」、「株式会社ZIZO」、「有限会社デコラティブモードナンバースリー」、「株式会社人間」、「株式会社NONVERBAL」、「株式会社parks」、「株式会社ミーティング」、「リノべる株式会社」の計13社に加え、「NPO法人HELLOlife」「株式会社ダブリューアール」の2社が新しく加わりました。

学生たちはガイドの引率で各企業を訪問。現場の雰囲気や、企業ごとにカラーが異なるクリエイティブ事例、うつぼで働くクリエイターたちの人柄にふれていただきました。

昨年に引き続き、うつぼ公園周辺の協力飲食店8店舗で使えるイベント独自のクーポン「UTSUBO FOOD TICKET」も配布。クリエイティブ企業訪問の合間にカフェ利用をしていただくことで、うつぼエリアの飲食店の魅力に触れていただくと同時に、お店の方々と学生との間に対話を生みだすことをめざしました。

協力飲食店は、「MASSE」、「スパイス居酒屋はらいそSparkle」、「CAFÉ SIK」、「チュロカアーラ」、「コトモノミチ at パークサイドストア」、「neji」、「CHASHITSU Japanese Tea & Coffee」、「YES!BURGER」の8店舗です。

加えて今年は、参加企業のクリエイティブ特性を表現した「企業シール」を作成。訪問時に学生にシールを手渡し、名札に貼り付ける形で、オフィスをめぐるツアーならではの楽しみを形として残せる仕組みを作りました。

また、例年同様「パネルディスカッション」を今回も実施。入社3〜4年目を迎えた中堅社員と、参加企業4社の代表による対談を行いました。

イベントに伴い、今年新たに作成したのが「UTSUBO PROFILE BOOK」。これは、学生がうつぼのクリエイター個人を深く知ることはもちろん、企業の枠を超えてクリエイター同士が知り合うきっかけづくりになることを狙って制作した仕組み。PROFILE作成に伴ってキャリアを振り返り、この街の魅力を考えることで、クリエイター自身がうつぼエリアで働く意味を見つめ直すという成果も挙げられました。

クリエイターたちのキャリアや、それぞれが考えるうつぼの魅力を書き込んでもらった「UTSUBO PROFILE BOOK」

また、昨年までは新型コロナウィルス感染予防を目的に、小規模でのみ開催していた学生×企業の交流会もブラッシュアップ。うつぼ公園に面したCAFE SIK、neji、株式会社アートアンドクラフトに、うつぼエリアの飲食店おすすめのメニューを集め、「食」という観点からも、うつぼの魅力にふれていただく機会をつくりました。交流会中は、学生がクリエイティブ企業の代表にポートフォリオを見せながらキャリアについて相談したり、別企業のクリエイター同士が気軽に雑談を楽しんだり、学生とクリエイターが一緒になってボードゲームを楽しんだり。より深い対話、交流が生まれる時間となりました。

結果と考察

2020年、2021年、2022年と継続的にイベントを成長させ、うつぼエリアの活性化と街・学生とのつながりを着実に深めてきた「UTSUBO DESIGN TOURS」。

3回目の開催となった今回は、「クリエイター自身がうつぼエリアの魅力を再発見すること」を目標にイベントを行いました。ここからは今回の目標を主体に、イベントの開催意義とその成果についてご説明いたします。

目的:クリエイターと学生の交流を通じ、うつぼエリアが持つ魅力を再発見する

「人」「公園のみどり」「飲食店」「クリエイティブ企業」という、うつぼエリアが持つ多彩な魅力を組み合わせた「UTSUBO DESIGN TOURS 2023」ロゴマーク

第4回となる今回「UTSUBO DESIGN TOURS」が目標としていたのは、学生にメリットを感じていただけると同時に、参加するクリエイティブ企業にとってもプラスになるイベントを実施すること。そのため「なんで、みんなうつぼ公園のちかくではたらいているんだろう。」というコンセプトを設定し、うつぼで働くことの魅力を学生に伝えつつ、その内容を自身にフィードバックする形で、クリエイターたちがこの街で働く意味を見つめ直し、企業同士の交流も深めていくことに注力しました。

この目標を果たすべく、今年は「UTSUBO PROFILE BOOK」の制作、企業同士の対話を深めながら、クリエイターもうつぼの「食」を楽しめる交流会の実施に挑戦。これらの仕掛けによってクリエイターたちが、うつぼエリアの他クリエイティブ企業に興味を持ち、つながりをつくるきっかけを生み出すことに成功しました。また、イベントを楽しむクリエイターたちの姿を見せることで、うつぼエリアが持つポジティブな雰囲気を学生たちに伝えることができたと考えています。

企業×学生だけでなく、学生同士、企業同士のゆたかなつながりを生み出した交流会

アンケート結果[参加学生 / 参加企業]

イベントに対する評価は、下記アンケートにまとめています。

参加した学生のアンケート結果

まず、学生向けに行ったアンケートの「就職活動で目安にしている基準」という設問では、「一緒に働く人」「働く場所や地域」を重視しているという、アンケート結果が集まりました。

「うつぼエリアで働くことに興味がありますか?」という設問では、92%の学生が「とても興味がある」「興味がある」と回答しました。

・インターンシップ以外で企業さんの社内を実際に見学して、実際のデザイナーさんとお話させていただく機会はなかなかないので、とても貴重な経験になりました。年に2回ほど開催してほしいくらい有意義なイベントでした。

・デザイナーの方から直接お話いただけて制作に対するモチベーションが高まりました。

・最後のパネルディスカッションでは、会社に入るまでの経緯や、会社に入ってからのお話窓ためになるお話が多く、こんな働き方もあるんだな、もう少し気楽に考えてもいいのかなと思えることができました。とても面白かったです。

参加した企業のアンケート結果

また、企業向けに実施したアンケートでも、100%がイベントに対し「とても満足した」「満足した」と回答してくれたうえで、「うつぼ町内会の活動に参加したいですか?」という「うつぼエリア」に対する関心度を示すアンケートでは「はい」と、肯定的な意見が89.5%を占めました。

・他者との交流が多々あった点。交流会の中でも、企業から学生に質問解答などをしているところを、学生の隣で一緒にきき、より詳しく他社の行っていることを知ることができたことも良いと感じました。

・学生の「働くこと」に対しての考え方を直接知ることができるだけでなく、自社の事業が、これからみらいをつくるクリエイティブ人材にとってどのように捉えられるかを直接的に感じられる良い機会だと思いました。またうつぼのみなさんと一緒に、このような活動をできることはほんとにいい刺激になるしたのしかった!


・どういう風に会社のことを伝えるか改めて自社のことを考える機会になるので社内の意識も少し変わること。学生さんと関わることで、スタッフが初心を思い出す機会になること。社外の会社の雰囲気やうつぼ内の関わりにより自社に足りない部分が見えたこと。新たにうつぼ界隈のクリエイターさんとのつながりを持てたこと。人間さんのデザイナーさんのクリエイティブから刺激をもらえたこと。

まとめ

昨年に引き続き、新たな成長を遂げることとなった「UTSUBO DESIGN TOURS 2023」。学生だけでなく、参加企業の満足度、クリエイターたちのモチベーションの向上につながるような側面を強化できた点が、今年の主な成果となりました。今後も「うつぼ町内会※」参画メンバーを主体として、イベントを通じて生まれた学生とのつながり、企業とのつながりを継続的に育てていく取り組みを実施していく予定です。

※うつぼ町内会 … 株式会社人間やうつぼ周辺企業が主となり、靱公園やその周辺をより活性化させる活動を行うチーム

一方で、初開催となった交流会においては、「話をしたい代表がどの会場にいるかわからなかった」「特定の学生と代表陣が話し込んでしまい、学生の待機時間が長くなってしまった」という反省点も。運営体制の強化やオペレーションの改善をめざし、今後は運営参加企業を増やすことなどを視野に入れて、活動を進めていきます。

次回の「UTSUBO DESIGN TOURS」は、2024年春に開催予定。その際には各大学への情報発信や、大学生との取り組みを増やし、企業や学生だけでなく、うつぼエリアの飲食店など街との連携を強める仕組みをつくりたいと考えています。


この研究に参加したメンバー

花岡
久岡 崇裕
松原愛美
小園智香
伊藤加奈
武内音
米山菜乃花
村川晃一郎

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