コロナ禍における地域イベントで、いかに多くの人を自分ごと化できるか

概要

コロナ禍におけるさまざまな制限で、就職活動で悩む大学生とうつぼ公園周辺企業を繋ぐために、2020年9月に行われた「UTSUBO DESIGN TOURS 2020」。参加企業の数を前年の10社から14社、参加学生の数を35名から50名に増やし、2021年4月8日に第2回目の開催となる「UTSUBO DESIGN TOURS 2021」を行いました。

[開催日時] 2021年4月8日(木)13時~18時
[会場] うつぼ公園周辺の参加企業の各オフィス
[内容] ① うつぼ公園周辺のクリエイティブ企業のオフィス見学
     ② 14社によるパネルディスカッション
[参加者] 大学生3,4年生50名
[参加企業] うつぼエリアのクリエイティブ企業14社
[主催] 株式会社人間
[協力] 学校法人瓜生山学園 京都芸術大学

背景

第1回目の「UTSUBO DESIGN TOURS 2020」では、テレビ取材にもご参加いただき、企業と街、両方の魅力を広く発信することに成功。同時に、クリエイティブ業界への就職を目指す学生に、企業のより内部を知っていただくPRができたイベントとなりました。
第2回目の開催となる今回は、参加企業・参加学生の数を増枠し、規模を拡大することにより「うつぼエリア」で働くさらに多くの人たちに、この街のPRをもっと「自分ごと」として捉えてもらうことを目的にイベントを行いました。

ツアーガイドがうつぼエリアを案内している様子

実験「コロナ禍でいかに多くの人を巻き込んで自分ごと化にできるか」

前回同様、「参加者全員のマスク着用を義務付け」など万全のコロナ対策を行った上で、今回の開催は参加学生の人数を35名から50名に増やしました。

参加企業は、前年も参加した「株式会社アクア」、「カリモク家具株式会社」 、「有限会社JIKAN Design」、「株式会社ZIZO」、「有限会社デコラティブモードナンバースリー」、「株式会社ドリッパーズ」、「株式会社人間」、「株式会社parks」、「NPO法人HELLOlife」の計9社に加え、今回は「株式会社アストラカン大阪」、「株式会社京阪神エルマガジン社」、「株式会社common graphic」、「株式会社ミーティング」、「リノべる株式会社」の5社が新しく加わりました。

出版社やリフォーム会社など、新たな業種の企業を追加することにより、前年度と比較して幅広い分野でのアプローチを心がけました。

さらに、前回は学生に対してだけツアーガイドを行っていましたが、今回の開催では社会人に向けての企業ガイドも同時に行い、大阪市の紙媒体、放送局、転職エージェント、Webメディア、デザイン制作会社など、さまざまな業界の社会人も企業見学にご参加くださいました。

結果と考察

コロナ禍という、制限がたくさんある条件下でも「うつぼエリアの街としての知名度向上」と「企業の内面や、スタッフの人柄を開示する」という、2つの目標を達成した初年度の「UTSUBO DESIGN TOURS 2020」。

今回も参加企業の説明だけでなく、うつぼ公園やうつぼエリアの魅力などを織り交ぜた概要説明でガイドツアーをスタートしました。

2回目の開催となった今回は、初回とはまたちがう目標を定めてイベントを行いました。ここからは今回の目標を主体に、イベントの開催意義とその成果についてご説明いたします。

目的:「うつぼエリア」のPRを、大勢の人の「自分ごと」にする

第1回開催時、学生に向けたうつぼエリアのツアーガイドも含め、外部スタッフを起用せずうつぼエリアの参加企業のスタッフだけでイベントを運営しました。これは、第1回の開催目的だった「うつぼエリアの街としての知名度向上」のためには、実際にうつぼエリアで働く社員が、自分が感じている街の魅力を自分で発信することが、最適なPRに繋がると考えたためです。

コロナ禍での開催で、限られた条件にも関わらず前回開催時よりも参加企業を増やした理由は、「UTSUBO DESIGN TOURS」の運営に関わるスタッフの人数を増やし、「うつぼ」という街のPRを「自分ごと」と捉える人を増やしたかったからです。

イベントの成果としては、第1回開催時に参加してくれた大学生が今年もまた参加してくれたり、今まで交流のなかった企業同士の新たな連携が生まれたりと、さまざまな実績が生まれました。

また、今回のツアーでは新たに「パネルディスカッション」の時間を設け、一部は「新卒編」、二部は「転職編」、三部は「代表編」とそれぞれ登壇者をわけ、採用や転職、これまでのキャリアを発表してもらいました。立場の違う社員からの多角的なエピソードにより、学生だけでなく社会人の参加者にも、企業に対してより親近感をもってもらえるしくみをつくりました。

アンケート結果[参加学生 / 参加企業 / 登壇者 / 招待企業・団体]

イベントの終わりには、今回参加してくれた「参加学生」、「参加企業」、「登壇者」、「招待企業・団体」の4者向けにアンケートを実施しました。

参加した学生のアンケート結果

まず、学生向けに行ったアンケートの「就職活動で目安にしている基準」という項目では、ほかの項目と大きく差をつけ「働く場所や地域」「一緒に働く人」を重視しているという、昨年度とおおむね同じアンケート結果が集まりました。

「うつぼエリアで働くことに興味がありますか?」という設問では、89%の学生が「とても興味がある」「興味がある」と回答しました。学生が「就職活動で目安にしている基準」で最重要視したのは、「働く場所や地域」というデータを踏まえたうえで、今回のツアーでうつぼエリアに興味をもってもらえた結果は、十分なPRが行えたことを示しています。

・いろんな会社を見てまわれてとても良かったです。また、ツアーを紹介してくださる社員の方が優しくて、とても緊張が解れました。どこも明るくて素敵な会社でそれぞれの会社の方が協力して開催している感じがとてもいいなと思いました。

・コロナ禍でオンラインの就職イベントが多い中、実際に見て、直接お話が伺える点が魅力的でした。楽しみながらツアーに参加させていただきました。

・ポートフォリオのお渡しや個別にお話しができたこと、訪問できなかった企業さんともお話しができたり、「出会いの場」という風にも感じました。

そのほか、学生向けアンケートで寄せられた意見では、上記のように「興味がある企業のスタッフと、直接話ができる」点に肯定的な声が集まりました。

参加した企業のアンケート結果

また、企業向けに実施したアンケートでも、92%がイベントに対し「とても満足した」「満足した」と回答してくれたうえで、「うつぼ町内会の活動に参加したいですか?」という「うつぼエリア」に対する関心度を示すアンケートでは「はい」と、肯定的な意見が100%を占めました。

・学生さんの意欲を対面で感じることができた。改めて自分たちの事業を見直すきっかけにもなった。うつぼ界隈のみなさんと知り合うことができた。

・普段、弊社へ応募のあると層と異なる層の参加があり、多くの企業と合同で行う意味がありました。また、弊社について、業務内容に関して、具体的に学生はどういったポイントに興味を持っているかがダイレクトに分かりました。

・意欲的な学生と出会えること。近くの他社様との交流。自社内、社員の教育。

企業にとっても、コロナ禍における採用活動ははじめてのことで、多くの企業が苦戦していましたが、「イベント参加企業」向けアンケートでは、本イベントを通して新たな採用活動の形を見出したという意見が多かったです。

パネルディスカッションに参加した登壇者のアンケート結果

「イベント参加企業」の中でも、「パネルディスカッション」に登壇してくれた企業の満足度はさらに高く「満足」「とても満足」がアンケート全体の100%を占めました。

・登壇後、進路に迷っている大学生から相談を受けました。今までの経験が、こんな形で役に立つとは思ってもみませんでした。全てに意味があるのだと実感できて、胸が熱くなりました。

・一線で活躍されている方の話を間近で聞けたのは面白かったです。

・近隣の他の会社に勤める同年代の方とお話したことがなかったため、つながりを作る機会となったのが良かったです。

「登壇後にさらに近しい学生とのつながりが作れた」という声や、「近隣企業との結びつきができた」といった声が多く、イベントの目的だった「自分ごと」が達成できたことを示すアンケート結果となりました。

参加した招待企業・団体のアンケート結果

「イベント参加企業」はうつぼエリアに拠点をおく企業ばかりでしたが、活動拠点を限定せず招待をおこなった「招待企業」向けアンケートでも、「うつぼ町内会の活動に参加したい」という意見が全体の86%を占める結果になりました。

・一度に複数社を訪問できたこと。また、実際のオフィス(仕事現場)を見ることで、その企業の社風や価値観をより感じられてよかった。

・パネルディスカッションで、複数の立場の方(新卒・転職・トップ)のお話を伺う機会を設けていただきました。それぞれの角度から語られる業務の捉え方や仕事選びの軸が刺激的で、このような話を拝聴できる学生がうらやましくなりました。

・クリエイティブ業界の方とお会いすることもオフィスに訪問することも普段なかなかない為、とても有意義な時間でした。刺激をたくさんいただけました。

「企業案内」というと、ほとんどが学生向けに行われるものですが、今回はじめて社会人向けの企業案内を行ったことにより、うつぼエリアに多く点在するクリエイティブ企業に興味をもっていただくことができました。

まとめ

今年度の開催は、初回に参加してくれた企業のつながりで、主催である弊社とは関りがなかった企業にも運営に参加いただきました。また、このイベントを通じて「うつぼ町内会」※ に入りたいと志望してくれる企業・人が増えたことは、リモートではなく実際に街を訪れてもらい、街の魅力を知ってもらうPRを行った功績だと実感しています。

※うつぼ町内会 … 株式会社人間やうつぼ周辺企業が主となり、靭公園やその周辺をより活性化させる活動を行うチーム

一方で、情報発信が足りずにさまざまな大学から学生を誘致できなかったことや、スタッフとして働く社員に対し、「説明会を行う企業の一社員」ではなく「うつぼエリアと関りのある個人」としてのPRをもっと行ってもらいたかったことなど、課題も多く残りました。

次回は2021年秋の開催を予定しているので、その際には各大学への情報発信を増やし、参加大学の数を増枠することと、企業や学生だけでなく、うつぼエリアの飲食店もイベントに協力していただける仕組みをつくりたいと考えています。

参考:
クリエイティブ企業を巡る、学生向けのオフィスツアー「UTSUBO DESIGN TOURS 2021」(瓜生通信)


この研究に参加したメンバー

花岡
久岡 崇裕
白井 康太
松原愛美
小園智香

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