クソリプの判定と生成ができる「人工知能」の用法と可能性の考察

クソリプができる「人工知能」を開発しよう。

概要

このレポートでは「クソリプを抑制するためには『クソリプか否か』を判断する第三者機関が必要である」という観点から、その役割を担う「人工知能」の用法を検討し、その実現と発展の可能性について検証することを目的としています。また、その為に「大喜利AI」の開発者である竹之内大輔氏(株式会社わたしは / 代表取締役)に協力いただきました。

背景

Twitterユーザーを不快にさせる「クソリプ」はなぜなくならないのか。この問いを追求していくうちに、1つの問題点が浮かび上がりました。それは「第三者機関がない」ということです。

第三者から見れば明らかなクソリプという場合でも、Twitterの性質上リプライを見るのは本人だけなので、被害者は孤立し「私が悪かったのだろうか」と自責の念にかられてしまいます。

被害者本人は「クソリプだ」と思えないケース

また、クソリプをした側(加害者)も同様に「あなたのそれはクソリプです」と第三者から定義されることがないため、自分がクソリプをした自覚を持てないまま改善されることなく野放しになっています。

クソリプ送ったのに気づいていないケース

つまり、もし「クソリプとは何か」を定義し「クソリプか否か」を裁くことのできるクソリプ第三者機関が存在すれば、クソリプ被害者の駆け込み寺としても機能し、クソリプ加害者が罪を自覚し改善するきっかけを与えられる存在になるのではないでしょうか。

クソリプ第三者機関の役割

第三者機関としての「クソリプAI」

クソリプの第三者機関を設立する場合、2つの課題に直面します。

01
クソリプに関する定義の不在
これまで「クソリプとは何か」を定義した文献は存在せず、第三者機関としてクソリプ判定をしていくのであれば尚のこと詳細な定義をする必要が出てきます。
02
人的リソースの不足
現段階で推測するに、クソリプかクソリプでないかを判断する機関が存在したとしても収益を上げることは難しいでしょう。また、公的機関として国から支援されることも考えがたいので、人を雇うことが難しくなり、筆者が仕事の合間にせっせと対応するのでは限度があると考えられます。

上記2点の課題を解決する手段として私が考えたのが「人工知能(以下:AI)」です。AIならば膨大なクソリプデータをディープラーニングすることで「クソリプの定義」を可能にし、判定の自動化によって人件費もほぼ0に抑えられます。

つまり「クソリプ判定器」としてのAIを用いることで、クソリプの第三者機関が実現することになります。

反面教師としての「クソリプAI」

「クソリプ判定」の技術を応用すれば「クソリプ生成」もできるかもしれません。例えばAIアシスタント「Alexa」が何気ない日常会話を聞き取っていきなりクソリプを返してくる専用アプリ「アレクソ」や、面と向かってクソリプを言い放ってくるPepper「クソリッパーくん」などが実現できるでしょう。

Alexaが日常会話にクソリプを放り込んでくる専用アプリ「アレクソ」
クソリプを言ってくるPepper「クソリッパーくん」

普段からクソリプ被害にあわない人は自分が誰かにリプライをする際に「これはクソリプになってしまう」ということを自己認識できません。その点において「アレクソ」はクソリプの反面教師として役立ちますし、突如クソリプが飛んできた時の免疫をつける効果も見込めます。

前項で述べた内容が「クソリプ判定器」であれば、こちらは「クソリプ生成器」としての用法になります。

しかし、このようなAIが開発可能なのでしょうか。

「大喜利AI」開発者である竹之内氏の見解

AIの開発について専門家の見解を伺うべく「株式会社わたしは(以下:わたしは)」の代表取締役CEOである竹之内氏に見解を伺いしました。

「わたしは」は大喜利ができるAI「大喜利AI」を初め数々のAIサービス開発するベンチャー企業で、LINEアカウント「大喜利人工知能公式アカウント」の登録者数は648,579人(2021/03/28時点)にものぼります。

大喜利AIの実力が話題となった投稿

竹之内氏いわくAIとは「“らしさ”を取り出す装置」とのこと。例えばタレントの「アンミカ」さんの情報をAIに読み込ませると、AIがアンミカのパターンを抽出し、ある種の「アンミカらしさ」を取り出すことができるそうです。

また、その原理からもクソリプを大量に読み込ませて「クソリプらしさ」を抽出してアウトプットまで導く「アレクソ」や「クソリッパーくん」の実現は不可能ではないんだとか。

ただし、実現には大きなハードルがありました。
クソリプAIを作るためには元ツイートとクソリプの組み合わせが最低でも100万通りは必要なのです。

無謀とも思える数字ですが、竹之内氏はこれを可能にするプランを提案してくださいました。

01
クソリプの定義を深める
クソリプとは何なのか?クソリプにはどのようなパターンがあるのか?クソリプに共通する特徴は何なのか?と、クソリプに関する議論を深めて「クソリプの定義」を深めていく作業。
02
クソリプ判定器を作る
01で深めた定義を元に「クソリプか否かを判断するアルゴリズム」を作成し、Twitterのテキストを読み込んで「クソリプ判定」ができる判定器を制作します。
03
クソリプデータを100万件集めてクソリプ生成を可能にする
01と02を繰り返しながらクソリプ判定器の精度を高め、信用できるクソリプデータを100万件集め、それらを用いて「クソリプ生成」を可能にします。

たしかにこの方法であればクソリプを大量に集めることができ、「クソリプ判定器」も「クソリプ生成器」も完成します。
有り難いことに竹之内氏も本研究にご協力いただけるとのことだったので、あとは筆者本人がどこまで食らいついていけるかが課題です。

まとめ

何やら“おおごと”になってきた。

本研究を通してまずは「100万件のクソリププロジェクト」とも言える壮大な企画が産声をあげたわけですが、紛れもなく「おおごと」になりつつあります。

多くの方は察しがついているかもしれませんが、そもそもこの「クソリプAIを作ろう」に火がついたのは「アレクソ」というダジャレが思いついたからに過ぎません。

しかし、竹之内氏という規格外の助っ人に出会ったことで、これが単なるギャグの領域から実現可能な「プロジェクト」に昇華されたのです。

もし仮に「クソリプAI」が開発されれば、最初の仮説通りTwitterが少しは平和になるかもしれません。ならないかもしれません。

ただ、必ず前進させますので、続報をお待ちください。


この研究に参加したメンバー

岡シャニカマ
イシカワケンジ
竹之内大輔

この研究室の他のレポート