概要
「公共性の確保」のための規制強化により、敷地内で行える行為が限定的になりつつある地域の公共空間「公園」。安全性の確保はもちろん重要ですが、利用者が減り、大規模な都市型公園が衰退すると、周辺エリアの活気も衰えます。そこで今回は、公園のさらなる存在意義を探るために靭公園で映画を上映し、「公園」という特別なスポットがもつ地域振興の有効性を証明しました。
背景
国内に公園が増え始めた1960年代後半は「児童のため」。1990年代に突入し「都市公園法」が改正されると、少子高齢化の影響で「全世帯のため」。その後、自然災害が相次ぎ、地域の避難場所に指定されてからは「安全のため」と、時代の流れと共に存在意義を増やしてきた「公園」。それに伴い、利用者が公園に求める価値も多様化していきました。使用目的や利用する世代の幅が広がると、すべての人たちが安心・安全に公園を使用するための「規制」も増加し、現在ではボール遊びさえ禁止されている公園も増えています。
しかし、規制の増加により利用客が減少し、大規模な都市型公園が衰退してしまうと、同時に周辺エリアも「街」としての価値を損ないます。「うつぼ研究室」では、うつぼエリアの財産である「靭公園」の安全性や公共性を確保しつつ、活用のハードルを下げ、公園を舞台にした地域活性化の可能性を模索するため、公園映画祭「うつぼ公園シネマ」を実施しました。
公園映画祭「3つの課題と解決方法」
公園で映画祭を実施するには、3つの大きなハードルがあります。それは「会場」「電力」「作品」です。この項目では、それぞれの問題点と解決方法について解説します。
結果と考察
『公園映画祭「3つの課題と解決方法」』の項目で述べた通り、靭公園での映画上映会は前例がなかったため、たくさんの方のご協力を経ての開催になりました。
この項目では、イベントを開催当日や、イベント準備過程に生じた2つの実験結果について考察していきます。
実験結果①:新たな地域のつながり
今回のイベントはSNSなどで告知をせず、関係者だけで試験的にイベントを開催したにも関わらず、当日はふらっと立ち寄った見ず知らずの方にもご参加いただけることに。
靭公園は、昼間は周辺の会社員や住民が訪れることで活気ある公園ですが、夜は人もまだらで来訪者も多くありません。しかし今回の上映会のように、「公園」という誰でも入場可能でニュートラルな空間を会場にすることにより、たまたま立ち寄った方が「新たな公園の可能性」、さらには「新たな地域間のふれあい」を体感できるきっかけを作ることができました。
実験結果②:色んな人を巻き込む重要性
今回のイベント開催に際し、「大阪城公園事務所」さまと「靭連合町会」「西船場連合町会」の両会長さまには、たくさんのご協力をいただきました。
「会場」「電力」の確保を目指す過程で、「靭連合町会」会長さまのお話から、ほかの靭公園で行われたイベントの際にも、地域の方々が何人も力を合わせ、イベントの成功のために尽力していることを知りました。
「地域を盛り上げたい」という目的意識があるからこそ、地域の心臓部である靭公園を媒介とした、強固なつながりが生まれるのでしょう。映画上映会の開催理念である「靱公園を盛り上げたい」「もっと多くの人に公園を利用してもらいたい」という部分も、「靭連合町会」会長さまに強く共感していただきました。
今回のイベントでもさまざまな方とのヨコのつながりを形成できたことから、イベント当日だけでなく、準備期間に色んな人を巻き込む過程にも、地域振興の可能性を垣間見ることができました。
このとおり、実験結果①~②で記述した、会長さまやご参加いただいた地域住民の方々の反応から、地域を盛り上げるイベントを「公園」で行う有効性を証明することができました。
まとめ
「背景」の項目でも述べた通り、時代背景の移り変わりによってさまざまな規制が強化され、「老舗のコミュニティスペース」としての機能を失ってしまったかのように思われている公園。しかし、公園の利用制限の変化にわだかまりを感じているのは、決して来訪者だけではありません。「靭連合町会」の会長さまのように、公園を管理する立場にいらっしゃる皆さまも、公園の衰退を阻止する方法を日々模索されています。
「うつぼ研究室」では、うつぼエリアならびにうつぼエリアを活動拠点とする企業のさらなる活性化を研究目的としています。
今回の実験で、公園を舞台とした地域振興イベントの有効性は無事証明できました。今後も地域住民の皆さま・周辺企業のクリエイターとともに、靭公園とうつぼエリア両方を、さらに賑やかにするためのイベントを企画していきます。