セミの鳴き声を模した音声広告「サブセミナル広告」は、新しい広告手法になるのか?

実験概要

夏の風物詩である蝉しぐれ。公園で鳴き響くセミの鳴き声は日常であり、大音量にも関わらずセミに対してクレームを言い出す人は誰もいません。しかも、西日本に生息しているクマゼミの音圧レベルは80~90dbらしく、「機械の音がうるさい工場内並」の騒音とも言われています。

そんな大音量で流せる広告があったらいいな、と思ってずっと構想していた広告手法が「サブセミナル広告」です。

「サブセミナル広告」
特定のメロディをセミの鳴き声で作り出し、その音源をセミがなく環境に紛れさせることで、ごく自然に通行人へ聞かせることができる広告手法。
(ちなみに、「サブリミナル広告」は、テレビやラジオの媒体を通じて人間の潜在意識に訴求する形式で広告効果を狙う広告手法です)

本研究では、セミの鳴き声を模した音声広告「サブセミナル広告」に、通行人は認識できるのか?新しい広告手法になり得るのか?を実験しました。

実験内容

① セミの鳴き声を分析しよう

「サブセミナル広告」の実験に用いるセミの鳴き声にリアリティを求めるためには、実際のセミの鳴き声の音階・音域を調べた上で、それに適した曲を選ぶ必要がある。

セミの鳴き声はざっくり
・音圧(音の強さ): 70~90db
・周波数(音の高さ): 1,000~10,000Hz(うち3,000~6,000Hzに集中)

と言われており、セミは腹部全体を共鳴させて音を出しているため、鳴き声に多くの倍音が含まれている。
ここで、スタジオ(株式会社ステップ)に協力を依頼し、実際収録されたセミの鳴き声がどのような音階で構成されているのかを確認した。

いくつかのセミの鳴き声を聞いてみたところ、88鍵盤の一番左のラをA0、一番右の高いドをC8とした場合、
・ミンミンゼミ: E5 / F5 / F#5 / G#5
・クマゼミ: F5 / B♭5
・アブラゼミ: G5 / G#5 / A5 / B5
・ヒグラシ: C6 / D6

という音階で構成されているものが多く、あまり幅広い音域ではないことがわかった。
またセミの鳴き方を考えた場合、「ミンミンミン」や「ジジジジジジ」と短音なので、あまり白玉音符(全音符や二分音符)が出てこない曲のほうが自然に仕上がるのではないかと予想した。

さらに、セミの鳴き声を人間が音階でとらえるのに少し時間がかかることから、テンポが比較的ゆっくりしている曲を選ぶほうがいいようにも考えた。

② 選曲と選蝉

①の分析結果からベースの曲は、音階が狭くてテンポがゆっくり目で子どもでも知っている「チューリップ」に決定。
当初は、サカナクションの「新宝島」で「セミナクション」と名付けて実施しようと思ったが、許可が出るはずもないので却下した。

セミの種類は、ドラマやアニメによく使用されている「ミンミンゼミ」に決定。今回の実験場所である靭公園(大阪市)ではほとんど生息しないが、一般的に聞き馴染みのある種類を選択した。

③ 実証実験

実験「スピーカーから再生されるオリジナルセミ音源に、通行人は違和感を感じるのか?」

8月上旬、大阪市内にある靭公園にて、スピーカーからチューリップ(ミンミンゼミバージョン)の音声を流して実験を実施。

[日時] 2021/8/3 18:00~19:00
[場所] 靭公園(大阪市)
[天気] くもり30℃
[設置場所] 道の脇のくさむら
[曲] チューリップ(ミンミンゼミバージョン)

途中からチューリップを歌います
道の脇の見えないところにスピーカーを設置
通行人からは本物のように聞こえる

まとめ

実験結果は、あまりにも自然に他のセミと紛れてしまったため、「チューリップを歌っているセミ」であることを認識できている通行人はほぼいなかった。

しかし、この広告手法が一般認知されれば、セミの鳴き声に耳を傾ける人が増え、夏の公園や商業施設や観光地をたのしく演出できる可能性は十分にあると考えられる。また、夏に限らず、季節外れのセミとしてもおもしろく演出できそうです。

「サブセミナル広告」紹介映像

たとえば、
・新発売する音楽の宣伝
・企業のサウンドロゴ
などに効果的ではないだろうか。

サウンドロゴなどは刷り込みが購買意欲を高める効果があると言われているので、子どもや子育て世代をターゲットにした企業や商品のサウンドロゴへの活用は期待できそうな気がする。

この「サブセミナル広告」をぜひ導入してみたい!という企業・団体がいましたらお問合せにご連絡ください。


この研究に参加したメンバー

花岡
山根シボル
おおたゆい